飼料評価と飼料設計
CNCPSを利用するにあたっての最初のステップは、飼料評価です。
飼料評価とは、言い換えればモデル(=CNCPS)と実状を合致させること、
そして、牛の体内で生じていることを数値化して評価することを指します。まずそれが出発点です。
評価して問題点があった場合、それらを改善するだけで生産向上につながる可能性もあります。
評価を経て、さらに生産量を高めていくステップが、飼料設計となります。
要求量の設定
飼料評価・設計プログラムにおける要求量の設定は、因子アプローチという手法が用いられています。
摂取量と排泄量の差から、個体全体がどれほどの栄養素を要求しているかという、おおよその量は算出可能ですが、体内のどこにどのくらい必要かは分かりません。そこで因子に分け、各因子でどれほどの栄養素が必要かを求めていけば、要求量を予測する精度が高まります。
前提は正規分布
飼料評価・設計は個体に対して行わず、群に対して行うことが前提です。
ある群の乳量が正規分布をしている群の平均値であれば、モデルによる乳量の予測精度は高まります
(下図、米国農場の泌乳中期群の乳量分布の一例)。
CNCPSにおいての飼料評価・設計が、各ペン(高泌乳、低泌乳、乾乳前期、乾乳後期など)に分けてアプローチしていく所以はそこにあります。
正規分布より相当外れた分布の場合、平均値は必ずしも群の平均乳量を反映していないかも知れません。
その場合は最頻値か中央値の適用、あるいは、極端な数値を除外して平均値を算出した方が良いため、乳量のバラツキを確認しておく必要があります。
飼料設計のアプローチ
下図は、飼料設計の基本的なアプローチとして、コーネル大学の授業で紹介されました。
1~4の順番に組み立てていくことが基本と説明されています。
約10年前の資料ですが、基本的な概念は変わっていません。
現在の飼料内容が適切かを判断する「飼料評価」も、同じ順番で確認していけば良いと考えられます。
プログラムの基本はインプットとアウトプット
飼料評価・設計プログラムの有用性が高いか低いかは、インプット項目である飼料分析値と、アウトプット項目である乳量・乳成分・体変化という生産指標が、理論的に適合しているか否かで判断されます(Daniel et al., 2020)。
インプット項目には、飼料分析値に加え、群を構成する牛の情報や飼育環境も含まれます。
プログラムの有用性が高いと判断された場合、次に重要なのは、プログラムが求めているインプット情報を正確に入力できているかどうかです。飼料分析値、牛情報、環境情報が合理的、且つ実測値に基づいていれば、アウトプット値の予測精度が上がります。
体重の重要性
体重は、あらゆる飼料計算ソフトにおいてインプット項目の中の最重要項目の一つと認識されています。
従来より、予測乾物摂取量の算出に必須であり(下図)、CNCPSにおいては、飼料の通過速度の決定要因にもなっています。要求量の因子アプローチにおける維持要求量、および蓄積要求量、さらに成長中や妊娠中の牛においては、それぞれの要求量の予測にも必要となります。